「センスありますよね」

そう言われることはあるけれど、正直いつも少しだけ違和感があります。

デザインの現場でやっていることは、ひらめきというより翻訳に近いから。

クライアントさんが持っている想いは、たいてい言葉になっていません。

「なんとなくこんな感じで」

「うまく言えないんですけど」

この“なんとなく”の中に、本当に伝えたい核が隠れています。

だから一番大事なのは、作る前の時間。

ヒアリングです。

どんな人に届けたいのか、なぜそれをやろうと思ったのか、過去にうまくいったこと、うまくいかなかったこと。

一見デザインと関係なさそうな話の中に、ヒントが山ほど転がっています。

「言葉にできない」を、そのままにしない。

表情、言い直し、間。

そういう小さなサインを拾って、「つまり、こういうことですよね?」と形にしていく。

これがデザインの正体だと思っています。

センスがあるかどうかより、

相手の話をどれだけ丁寧に聞けるか。

そして、それを噛み砕いて、見る人に伝わる形に変換できるか。

それができれば、デザインはちゃんと機能する。

デザイナーは魔法使いじゃない。

翻訳者。

言葉にならなかった想いを、ちゃんと届く言葉と形にする。

地味だけど、だからこそ面白い仕事だな、と今も思っています。