つい先日、草木染めをしているアーティストさんとお話をする機会がありました。染めの世界なんて、正直あまり触れたことのない分野。でも話を聞いているうちに、これから先の人生、いわゆる“老後”をどう過ごすのか、どうデザインしていくのかを考えさせられました。

まず思ったのは「70歳」という区切り。私のビッグボスも70歳で事務所をたたみました。仕事を一線で続けるのはそこまで、という一つの目安。でもアーティストさんの話を聞いていると、「そこで終わり」ではなく「そこで新しいスタートを切る」という考え方があるんだと気づかされます。

例えば「絵本を書いてみたい」とか「よもぎ畑を作りたい」とか。聞いているだけでワクワクしてきます。よもぎが絶滅しかかっているなんて知らなかったし、他にもいろんな薬草が消えかけていると聞いて驚きました。自然破壊のこと、環境のこと、平和ってなんだろう…そんな大きなテーマにまでつながっていく。

人間って進化の途中にいるんだなと改めて思いました。便利さを追い求める一方で、なくしてはいけないものがある。自然や伝統の知恵はその代表かもしれません。

気がつけば「老後」って言葉も、ちょっと違って聞こえてきます。終わりというより、むしろやりたいことを自由にやれる時間。仕事や責任に縛られないからこそ、心のままに動ける時間なんだと。そう思うと、全然時間が足りない!と笑ってしまいました。

結局、老後をどう過ごすかも“デザイン”のひとつ。仕事のデザイン、生活のデザイン、未来のデザイン。そして人生そのものをどう描くか。私はデザイナーだからこそ、老後もやっぱり「デザインしてみたい」と思うのです。