先日、姪っ子(2歳)が描いた絵を見る機会がありました。まだ言葉を並べるのもおぼつかない年齢なのに、筆を持つと自然に画用紙に色が広がっていく。その筆圧がとても心地よく、まるで「これがちょうどいい強さなんだよ」と教えてもらっているようでした。線も形も大人から見ればバラバラかもしれませんが、そこには優しさや柔らかさが確かに宿っていました。

私はデザインの仕事をしていると、どうしても「整えること」に意識が向きます。線をきれいに揃えたり、色を調和させたり、余白を計算したり――。もちろんそれはプロとして大切なことなのですが、一方で子供の絵には、整える前の“自由さ”と“素直さ”が詰まっています。姪っ子の絵を見ていると、デザインの根っこにある「心を伝える力」はここにあるのではないかと思わされました。

特に印象的だったのは、彼女が筆を動かすときのリズム感。無理に描こうとせず、思うままに筆を走らせる姿はとても自然で、デザイナーが理想とする“余計な力を抜いた線”そのもの。私はつい「こう描かなきゃ」「こうまとめなきゃ」と思い込みがちですが、本来のデザインはもっと自由で、もっと人をやわらかく包み込むものでいいのかもしれません。

子供の絵は、技術的に優れているわけではありません。それでも心を打つのは、嘘のない表現だから。姪っ子の筆から生まれる線や色は、どこか懐かしく、そして新鮮でした。私にとっては、デザインを学び直す時間のようでもありました。

これからもデザインの現場では技術やルールを大切にしつつ、姪っ子の絵のように“心地よさ”や“優しさ”を忘れないでいたい。小さな子の自由な表現に触れることは、大人にとっても大切な学びなのだと改めて感じました。