「仕事って何だろう?」と考えることがあります。デザインをしていると、ただ“見た目を整える作業”ではなく、その奥にある意味や役割を問われる瞬間が多いのです。

デザインの現場では、黄金比という考え方がよく登場します。1:1.618の比率は自然界や芸術、建築に数多く存在し、人が美しいと感じる普遍的なバランスを生み出します。私たちデザイナーも制作の際にこの比率を意識することがありますが、それは単なる計算や装飾のためではありません。黄金比を用いることで、人の心に自然と「心地よさ」を届けられるからです。

では、この考えを「仕事」という大きなテーマに重ねるとどうでしょうか。仕事もまた、誰かにとって心地よさや安心、納得感を与えるバランスをつくり出すものだと思います。数字や理屈だけでなく、人の感覚や感情を大切にする。効率やスピードだけを追求するのではなく、相手が受け取ったときに「これでいい」と感じてもらえるような配慮。それこそが仕事の本質に近いのではないでしょうか。

私にとってのデザイン制作は、黄金比を探す旅に似ています。情報量と余白、色と形、機能と美しさ。相反する要素の間にあるちょうどよいバランスを探し出す過程です。その試行錯誤こそが“働く”という行為であり、結果的に「人に届く」ものを生み出します。

つまり仕事とは、単なる労働や義務ではなく、人に価値を渡すためのデザインそのもの。黄金比が美を支えるように、仕事もまた人と人との間に心地よい調和をつくるために存在するのだと、私は思います。