「五體字類」という本を、父にもらった。
そういえば私、父からもらったものって、本が多かったなと、ふと思う。
父は書道の先生。正確には教員で、専門は書写。
自分が大学で専門分野として書を学べたことが、何より嬉しかったと言っていた。
私はというと、父の書に対して、昔はあまり深く興味を持っていなかった。
でもデザインの仕事をするようになってから、不思議と“文字”の相談は父にするようになった。
「こういう雰囲気の文字を書きたい」とか、「もう少し柔らかくならないかな」とか。
父は真剣に向き合って、何パターンも書いて見せてくれる。
そのたびに「文字って、奥が深いなあ」と感動する。
今さらだけど気づいたんです。
あれって、デザインでいうところの“フォント”の違いなんですよね。
筆の角度、線の太さ、余白の取り方。
これは読みやすい、これはちょっと読みにくい、そういう微差の感覚。
私、小さい頃から父に文字を通して、
そういう“感性”を教わっていたんだなって。
43歳にしてようやく気づきました。…遅い!笑
でも、この歳になっても新しい発見があるのは、
父がいつまでも現役で、文字と向き合っているからこそ。
私はデザイナーとして、父は書の専門家として、
いつの間にか仕事のフィールドが重なるようになってきたのが、なんだか嬉しい。
これからも父に頼りながら、文字ともっと仲良くなっていきたいな。
私らしい“書体”を、デザインで探し続けていきたいです。