デザインをしていると時々聞かれるのが、「赤と緑って見分けられない人がいるんですよね?」という質問。そう、これは色覚多様性(いわゆる色弱と呼ばれるもの)の話で、実は日本人男性の約5%、女性の約0.2%が該当します。つまり、身近に必ずいるレベル。デザインの仕事をしている以上、ここを無視するわけにはいきません。

例えば赤と緑。私たちが普通に見ている“鮮やかなコントラスト”が、人によってはほぼ同じ色に見えることがあります。クリスマスカラーどころか、ただの“くすんだ同系色”に見えてしまう。信号も“位置で判断”するのはそのため。色だけに頼ると、伝わらない可能性があるんです。

だからこそデザインでは、色だけに情報を預けない工夫が必要になります。

・色が似ても読めるように、文字の太さや形を変える

・重要な部分にはアイコンを追加して補強する

・背景と文字のコントラストを十分にとる

・赤と緑を使うときは“明度差”を大きくする

こうした“色の補助”をつけるだけで、誰にとっても読みやすくなる。実は色覚多様性に配慮して作るデザインは、結果的に全員に優しいデザインになるんです。

私はデザイナーとして長く仕事をしているけれど、この考え方は年々大切になっていると感じています。なぜなら、チラシやパンフレットは不特定多数に配られるものだから。イベントの告知にしろ、行政の資料にしろ、「誰が読むか分からない」前提で作るのがスタンダードになってきています。

最近はスマホで閲覧する人も増え、画面の明るさやブルーライトの影響で見え方がまた変わる。だから色選びでは“見やすさの確保”がますます重要になっています。

もちろん、色の世界は美しいし、デザインには個性も必要。でもその上で、“ちゃんと伝わる”ことが大前提。伝わらなければデザインの意味がない。クリエイティブは自由だからこそ、こういう配慮も欠かせない。

「誰にでも見える・伝わるデザイン」。

これからのデザインの標準は、ここにあります。

赤と緑が見分けられない人がいるという事実は、“優しさのあるデザイン”を考えるきっかけなんです。