先日、伊勢和紙に写真をプリントしている個展を見てきました。正直、最初は「そこまでやるの?」と驚いたんですが、展示を見ているうちに納得せざるを得ませんでした。いや、もうこれは完全に変態領域。普通の紙では絶対に出ない、あの感触や質感、光の入り方や色の深み…伊勢和紙はそれを全部補って、むしろ新しい表現を生み出しているんです。
写真を「ただの印刷物」として扱うのではなく、和紙という伝統素材と組み合わせることで、作品がまるで呼吸しているかのように見える。触れた瞬間に「あ、これは紙じゃない」と分かる重厚感。そこに写し出されている風景や人物までも、どこか凛とした存在感を放っていました。
私は普段デザインの仕事をしていますが、改めて「紙」ってすごいなと思いました。データのやりとりやSNS投稿が当たり前になっているこの時代に、紙そのものの質感が人の心を動かす。たった一枚の和紙にプリントされただけで、作品全体の意味や受け取り方まで変わってしまう。そこには確かに「素材の力」があるのだと感じました。
もちろん、手間もコストもかかるはずです。和紙は扱いも難しいし、プリントの技術も必要。でも、その「こだわり」があるからこそ生まれる体験があります。展示を見ながら「ここまで徹底できるのって、本当に作品と観客のことを考えているからなんだろうな」としみじみ思いました。
伊勢和紙に写真をプリントするという発想。普通なら「やりすぎ」って笑われるかもしれません。でも、その「やりすぎ」が人を魅了する力になる。変態的なこだわりって、実は一番クリエイティブなのかもしれませんね。