「デザインとマーケティング」ってよく言われますよね。企業には“マーケティング部”なんて部署もあったりして、きっと市場調査をして戦略を立てているんだろうなと思います。でも私は、数字や資料よりも“現場に行くこと”のほうが大事だと感じています。いわゆる「ロケハン」や「現場取材」と呼ばれるもの。実際に自分の目で見て、耳で聞いて、肌で感じることでしか得られない情報があります。

先日、カレーを食べに行った時のこと。店主さんとお話をする機会がありました。「このカレー、試作どれくらい重ねたんですか?」と聞くと、何度も何度も改良を重ねたという答えが返ってきました。スパイスの配合や煮込み時間、具材の組み合わせ…一皿の裏には、想像以上の試行錯誤が詰まっていることを知り、料理もデザインと同じだなと感じました。

さらに面白かったのは「今日は売れないなぁ」という店主さんの言葉。理由を聞くと「今日のお客さんの層だと、このカレーは刺さらないんだよね」と。味に自信があっても、相手によって売れる・売れないがある。まさに“現場ならでは”の気づきです。

デザインも同じで、机の上で考えた理論やトレンドだけでは足りません。そのデザインを誰が見るのか、どんな場面で触れるのか。現場を意識しないと、本当に届くものは作れない。マーケティングはデータや数字の分析も大事ですが、最前線で働く人の肌感覚にこそ、価値があるのだと思います。

私自身、デザイナーとしてただ形を整えるだけでなく、できる限り現場を見に行きたい。依頼主さんがどういう思いで商品を作り、どんな人に届けたいのか。その熱量を感じて初めて、デザインに命が宿る気がします。

「デザインは現場から」。そんな気持ちを、カレーのスパイスの香りと一緒に再確認した一日でした。